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正義論の展開−リベラリズム対共同体論の対立を超えて

背景
正義原理
 リベラリズム対共同体主義(1980年代)
 種々の理論的傾向の混在状況
  正義の公共性 より実践的な傾向
 
T ロールズ自身の応答「政治的リベラリズム」(1993)
ロールズの立場の変遷 
契機 共同体論からの批判を受けて

自我論 共同体との関係を強調

普遍主義と歴史(コンテクスト)主義の融合
民主主義社会の公共的な政治文化を前提とする

包括的な道徳哲学ではなく政治哲学へ
形而上学的テーゼからの離脱
(カント、ミルなどの立場との識別)
ロールズの「政治的リベラリズム」正義の政治的構造
  重畳的合意

変遷の原因と推測される事柄
多元的社会における社会的安定性の追求

対立する宗教・道徳の見解の実践的な合意を確保する必要
真実の追究よりも実践的な合意の確保が政治哲学の課題である。



 教育問題 「自律性に価値をおかない思想グループの育てている子供の教育について国家は干渉できるか?」
 包括的哲学としてのリベラリズムならば
 自律性に伴う諸価値を育成するように教育をデザインする要請

 政治的リベラリズムならば、知識としての憲法の存在のみしか教えられないことになる。

「政治的リベラリズム」に対する評価
 リベラリズム陣営 不評
 共同体論     ロールズは共同体論に近くなった
 プラグマティズム 高く評価 ローティ

 
U リベラリズムの新しい主張−井上達夫の逞しきリベラリズム−
「共生の作法」創文堂
「他者への自由」創文堂
正義の基底性
リベラリズムの独自の哲学的基礎付け
正義の公共性
正義の独立性(
以上三つで正義の基底性

公共的価値と非公共的価値を区別化

公共的価値 公共性要求
非公共的価値 妥当性要求


U リベラリズムの新しい主張−井上達夫の逞しきリベラリズム− 
続き

価値論的基礎
人格構成価値(公正な社会条件)
人格完成価値(善き生構想)

人間学的基礎
自省的主体性を備えた自己解釈的存在としての自我
共同体論の成果を吸収して超越する。
参加民主主義的主張の重視

V 対話適合理性アプローチ−ハーバーマスのコミュニケーション的合理性−
対話論的アプローチ 実践哲学の復権
英米日常言語分析学派 ヘアー、トゥルーミン、バイアー
レトリック論 ペレルマン
構成主義倫理学 ローレンツェン、シュベーマー
討議倫理学 ハーバーマス、アーペル

ハーバーマス「コミュニケーション的行為の理論」について
コミュニケーション的行為とは
 成果志向型である戦略的行為(他者は自己の目標達成ための道具)と対置される。
 相互了解型コミュニケーション行為
 我々は言語コミュニケーションを通じて他者との合意を目指し、それによって相互の行為計画を調整しようとする。

特有の概念
生活世界 
意義 元来は哲学者のフッサールの用語であり、ハーバーマスによれば、伝承された知が再生産され、共通の規範的確信によって社会が統合され、人々のパーソナリティが形成され社会化されていく、それらが再編される場ないし過程として用いられる。貨幣経済と対置して使われる。

 一定の必要条件(理想的発話状況)を備えた場での対話により正義が構成されていく。
理想的発話状況
1 言語能力と行為能力を持つ主体は誰でも討議に参加してよい。
2 a 各人はどんな主張でも問題化してよい。
  b 各人はどんな主張でも討議にもちこんでよい。
  c 各人は自分の態度、願望、欲求を表明してよい。
3 いかなる発話軍鶏、討議の内外を支配する強制によって、1と2で定められた自分の権利を主張することを妨げられてはならない。

理想的な対話状況の下での自由で平等な対話を通じて成立する合意に、実践理性の可能性を見る。

 典型例 陪審制裁判における陪審員間の対話
 その他 契約、地域団体等のコミュニティ間における決定手続き

カント倫理学を討議理論的に再構成しようとするハーバーマスの思想。
支持
普遍主義、実践的である。リベラリズムの攻撃された点を回避できる。
批判
合意思考の持っているパターナリズム。閉鎖性
理想的発話状況は結局のところ近代西洋に特殊な思想・制度・文化の産物に過ぎないのではないか。

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