Topページ>U部法哲学Topページレジュメ:法価値論U

正義論としてのリバタリアニズム


1 概観
意義 自由尊重主義 最小国家

タイプ
原理的なリバタリアニズム ノージック「アナーキー、国家、ユートピア」
実利的リバタリアニズム ハイエク「法、立法、自由」
市場を通して実現される、最小の統治だけが一定の便益を実行可能にする。最善の情報を利用する形態

2 原理的リバタリアニズム、ノージックの思想について

正義を実現し行使する主体 国家機関 
最小国家 暴力、窃盗、詐欺からの保護、契約の執行

人身の自由と私有財産の権利の尊重 ロック的権利
権利の基底性

1) 最小国家の正当化 アナーキズムとの対比
国家の必要性と道徳性
自然権(ロック的な自然状態)
損害賠償、報復
一定の条件(人は合理的利益を求めて行動する、他人の権利を尊重して侵害せず、侵害が生じたときに保証を支払う)
アナーキーな自然状態 国家(最小国家)の自生的な発生
保護協会の出現 独占的な支配的保護協会 
福祉国家的な拡大国家は道徳的に正当化されない

2)権原理論(権利取得の資格に関する理論)
財の分配が正しいかどうかを権原によって決定する
歴史的な過程に注目する
一定のパタン(範型)によって配分されない 

財産についての配分が正義に適っているか否かは、配分がどのように生じたかによる 必要条件かつ十分条件

3 ノージックのロールズ(リベラリズム)批判
ノージックによる原理的反論
ロールズは財産の獲得と移転の歴史を無視している。
旧約聖書のマンナの事例をあげる

ロールズの再反論 財産の獲得と移転の歴史を前提にしている。
ロールズに寄れば、ロック的諸権利(所有権)は公正のテスト(格差原理等)をパスした時に限って尊重される。ロック的権利が基本的制約ではない

ノージックによる実践的反論

構造的な正義を社会規制するのに使う場合には、国家が人々の行動に不断に恣意的に干渉することになる

ロールズの再反論 
福祉国家における税、規制は継続的かつ恣意的な干渉ではなくて、おこなわれることができる

評価 ノージックのロールズ批判は決定的な威力を持たない

共同体論(communitarian)
T 序
論者
M.サンデル「自由主義と正義の限界」
A.マッキンタイアー「美徳なき時代」
C.テイラー
M.ウォルツァー

共同体論者の共通する問題意識
自由主義の「善き生に対して全く異なる構想を抱いている人々さえ含む、すべての合理的人間から、自発的な忠誠を集めることができる社会的正義原理が存在する」「権利は善に優先する」という主張に反対する。

近代自由主義(個人主義)により生じた病理現象

共通する主張
類型
歴史主義的主張
共同体の伝統、共通善と共同体に帰属する個人の自己同一性を歴史的所与と考える。

参加民主主義的主張
市民の政治への参加を強調し公民としての徳性とその陶冶をめざす

U 論点
1 自我論
個人の自律性、主体性の価値の捉え方
サンデル
 位置づけられた自我、位置づけられない自我
 (負荷ある自我)
個人の自己同一性の構成基盤となる共同体を構成的共同体と呼ぶ。
2 共同体の伝統の評価
マッキンタイアー
競争原理の支配する自由市場経済を媒介として人間関係の手段化商品化を加速させる。
平等主義的な福祉国家論的諸政策は家族や地域の相互扶助的な共同体的紐帯を切り離す。
道徳の変容

3 普遍主義的主張ではなく歴史主義的主張
自由主義
善き生に対して全く異なる構想を抱いている人々さえ含む、すべての合理的人間から、自発的な忠誠を集めることができる社会的正義原理が存在する 
ロールズ 権利の善に対する優越

歴史を離れて社会正義は考えられない
権利より善が優越する 共通善の存在 
 

V 評価
1 リベラリズムからの反論
ロールズの反論
ロールズにおける自我は位置づけられない自我ではない

ロールズは共同体の伝統を無視していない

ロールズの主張は完全な普遍主義ではない

2 日本における共同体論の意味 会社主義


 ▲ ページトップへ