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法システム 3


四 法の社会的機能
五 法の射程と限界

四 法の社会的機能
法の社会的機能として挙げられうるもの
1 社会統制機能
2 活動促進機能
3 紛争解決機能
4 資源促進機能
1 伝統的
2,3,4 新しい視点
補足 法システムが自己組織的特質を有していると捉える社会システム論的アプローチ等から、法システムによる社会規制のあり方や限界について独自の議論が展開されている(独の法化論争)。
1 社会統制機能 
義務賦課規範
伝統的側面
 サンクションによって一定の行動様式がおこなわれるように社会を統制する 実力行使の側面 
近代法的視点
 物理的力行使の規制の側面
 サンクションの行使の決定権限、実行手続きの一定機関への集中化
 条件、内容、手続きを法的に規制して組織化
例 法の支配 法定手続きの保障 刑法の人権保障機能

2 活動促進機能
 権能付与規範 
 契約、遺言、会社設立
 自主的な活動が予測可能で安全確実なものとされる。
 
近代法的視点
近代法以降注目されている機能
ハート 権能付与ルールの重視

現代における展開

 法が活動促進機能を果たす場合には、市民相互の自主的な交渉や理性的な議論による合意の形成というソフトな面が前景に現れる。
 合意形成過程の分析へ

 民法 交渉過程の分析、再交渉義務

3 紛争解決機能
伝統的側面
 具体的紛争が発生した場合に公権的な最終的決定を下す機関(裁判所)がある
 社会統制機能との関係で強制サンクションの発動という側面
近代法的視点
 相互主張と議論が積み重ねられる場
 裁判の弁論過程の分析

 裁判による紛争解決機能の再検討
 法的争点の単純化抽象化する特徴(勝つか負けるかall or nothing)
 代替的紛争解決制度の評価

4 資源配分機能
近代・現代法的視点  福祉国家的国家観
法を各種の資源、財貨、サーヴィスを管理・配分する手段として捉える。
条件プログラムとしての目的プログラムとしての法への比重増大

政策目的を有する法の目的
経済活動の規制、生活環境の整備、公的サービスの提供、社会保障、保険、租税による財の再分配等  例 ○○基本法
特徴
 政策目標、機関の組織、手続きの規定、政令、省令、規則による実施

強制の方法
予算裏付けの有無 租税上優遇措置、補助金の交付等が中心
罰則の比重が減少

五 法の射程と限界 ―法と強制、法と道徳−
1 法と強制の関係について
 従来の議論  実力による法の強制保障 
 法の妥当性根拠 歴史学的効力論(オースティン主権者命令説)
 批判 a 法実証主義の立場から
    b 自発的な法遵守や相互依存関係を強調する立場

  主体の捉え方の変遷
  「市民は法による社会統制の対象」(社会統制機能重視)から
  「市民は法動体の主体」(法の活動促進機能重視)へ

法の強制手段の多様化
 伝統的 刑罰、制裁としての賠償金
 
近代・現代法的視点
  各種補助金の交付、税制上の優遇措置、追徴課税、行政の許認可ないし取り消し、制裁的要素を失った民事賠償

法的強制の正当化根拠について
  自由主義的立場からの正当化する立場について
 ミルの危害原理(harm principle)
  文明社会の成員に対し、彼の意志に反して、正当に権力を行使しう
  る唯一の目的は、他人に対する危害の防止である。彼自身の幸福は
  物質的なものであれ道徳的なものであれ、十分な正当化になるもの
  ではない。 ミル「自由論」
  但し現代では危害原理は自由主義の正当化としては不十分ではないかという批判もある。

2 危害原理と「法と道徳」との関係について
   1950年代のハートデヴリン論争
 1957ウォルフェンデン報告(売春・同性愛の非犯罪化)
  デヴリン判事 公共道徳の存在 公共道徳の存在意義
          社会の崩壊を妨げる
  ハート リーガルモラリズム批判、パターナリズム批判
      ある社会の道徳とその社会と同一視してはならない。
      不快原理による社会法益の保護

現代法におけるパターナリズム 
  パターナリズム:本人自身の利益のためということを理由におこなわれる自由への干渉
 リベラルな社会の前提となる自律的な人格の理想に反するパターナリズム的な干渉は正当化されない。

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