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法システム 2


三 現代法の特色

三 現代法の特色―近代法から現代法へ
1 法制度史の概観
中世法|近代法|現代法
近代法の意義
 フランス革命などによりもたらされた、特定地域の一定のイデオロギーを基底とする法システム
典型的な近代法的権利 国家からの不干渉を請求する消極的自由権:ex.表現の自由
典型的な近代法(典) 立憲主義的憲法、民法、刑法

2 現代法の意義
 基本的には近代法の延長だが、近代法の弊害を克服するために生まれてきた法システムと言われている。哲学でいうと、ポストモダンの動きと対応するといえる。
典型的な現代法的権利 国家への介入を請求する社会権: ex.社会権
典型的な現代法      独占禁止法・社会保障法
  
3 近代法の仕組みと批判
近代法の背景として考えられるもの
2大柱 フランス革命をはじめとする諸革命・制度変革、19世紀における法典化作業
分析
 政治的背景:
  近代市民社会の成立  身分から契約へという標語が有名である。
  夜警国家観の確立 
国家からの自由(公法と私法の二分論(大陸法)、私的自治の原則
 経済的背景:
  近代資本主義体制の生成と発展
    市場の枠組みの整備保障、自由競争原理の蔓延
    私的所有と商品交換を基盤とする法システムの構築(法典化の基盤)
     人格の対等性  権利能力、家族法
所有権絶対性  土地法
契約自由の原則 契約法
過失責任の原則 不法行為法
  対比してみよう!!
   中世では土地に対する封建的な束縛や職能団体による個人の活動の拘束があり、個人は職業の選択や取引活動、土地等の取引、移住の自由などが厳しく制限されていた。

 倫理的基盤:
 身分に基づく共同体から個人へ 但し、その個人は、共同体から切り離された個人という把握であった。
  上のそれぞれの基盤ごとに、哲学的思想としては、政治的個人主義|経済的個人主義|抽象的個人主義が対応する。

当時の思想家
メイン 身分から契約へ 「古代法」歴史法学、ラートブルフ 共同体でなく利益で導かれた人間へ

近代法システムへの批判
政治的側面
・社会福祉国家観の台頭
 見過ごすことのできない格差、社会的弱者の存在 (哲学者ラスキの指摘)

 その結果として、社会権、生活保護法などが生まれる。
・経済的側面
いわゆる「市場の失敗」 自由競争の結果、競争秩序自体の崩壊してしまう。
 経済的弱者の存在(使用者に対する労働者、企業に対する消費者)
  その結果として、経済法(例えば独占禁止法)、社会法(例えば借地借家法)などの強行法が生まれる。
・倫理的側面
 人格の捉え方に変遷が生まれる。
 抽象的個人主義への批判 共同体論(英米)
 リベラリズム陣営からの人格概念議論の深化が測られる。
 
4 現代法の諸相
 国家からの介入的法が多くなる(法化現象という問題が新たに生まれた訳)。
資源配分機能を有する法の増加
:各種の資源、財貨、サーヴィスを管理・配分する手段としての法
  組織や手続き(授権規範、ハートの第二次規範)だけを決め、
  具体的運用を各種行政官庁の裁量的判断
 
現代型訴訟の出現
 憲法訴訟等の政策志向型訴訟が出現して、従来の個別紛争解決型の訴訟とは異なる。
 多様な権利主張
 憲法13条に基づく人権
プライバシー権、日照権、平和的生存権、環境権等

6 法化問題
法化 出発はドイツにおける議論であることに留意すること。
「法化」という用語の用法
 1) 前近代的な社会関係が普遍的な法的ルールの下に包摂・合理化され、それと共に市民の権利意識が確立・定着していく過程(一般的用法)
 2) 福祉国家・社会国家の進展の中でその諸矛盾が明らかになり、国家の介入主義が反省を迫られている状況にある。社会介入の道具・手段と化した法の著しい増大の問題との関連で法化が語られる。
法化論争は現代国家の抱える諸矛盾を解決する様々なアプローチの一つである。
 その他の解決のアプローチとして
  リベラリズム(正義基底的リベラリズム等)、リバタリアニズムがある。
独の法化論争の視点
法のあり方そのものの質的転換 背景 条件プログラムから目的プログラムへ 
社会には法とは別個の自律的な自己統御過程がある。 
論者のその一 ハーバーマス
 批判社会理論
 ウェーバーの近代化過程の行く末についての見解を踏襲し、自己の概念を用いて解釈再構成した。世界をシステム(貨幣と権力)と生活世界とに分ける。
 法のプロセス化 生活世界へ繋ぎ止める
論者その二 ルーマン 
社会システム論
 不可逆的に進行する社会の複雑化と機能分化とに即した問題設定
分化・自律した各機能的部分システムの自己制御に基本的に任せる。