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法システム 1


一 法とは何か
二 実定法の基本構造

一 法とは何か
 法とは何かという問題は、出発点でありながら、最も難しい問題である。当初は、一応枠組みを把握するために、一般的な知識を身につける。
 
法システムとは、制度化された規範的なシステムであるとされるのが一般的である。とりあえず、ここでは、その前提で話を進める。

・法の規範的側面
法は規範であるが、個々の法規範には、性質の違う規範がある。
例えば、裁判規範(刑法199条)、組織規範(憲法25条)など
・法の制度的仕組み 法が定立・適用・執行される側面 実効性が必要である。
・法に特有な思考方法 主体としての法曹集団の特徴

 法規範が破られたときの効果として一般的に言われるのは国家による組織された強制的サンクションが加えられるということである。典型的には、刑罰を想起せよ。
 では、そもそもサンクションは法の規範的特質にとって決定的であるといえるのであろうか。
 従来の議論 決定的である    主権者命令説以来の考え方である。
 最近の議論 決定的ではない   活動促進機能→議論フォーラムとしての法

制度的側面
 三権分立の制度がとられている。
  法適用
法による裁判 制定法と判例の位置づけが重要である。

法的思考方法 
 法学独特の論法と論法を担う専門集団 主体 専門集団 法曹としての特徴
 

二 実定法の規範的構造
1 準則(rule)と原理(principle)
法規範の重要な分類の一つとして、 準則(rule)と原理(principle)とがある。とりわけ、近時この区別は、日本法のような大陸法系でも、英米法でも重要視されているので、まずこの区別をしっかり押さえておく必要がある。

準則 条件プログラム 法律要件と法律効果を明確に分類して指図するタイプの規範
原理 目的プラグラム 抽象的指針により指図するタイプの規範 例 一般条項

では、原理の適用の際に裁判官は拘束されるかだろうか。
  R. ドゥオーキンの議論がここでは重要である。詳細は、法的思考で扱うが、この問題に関連する彼の著作としては、『権利論』『法の帝国』などがある。

3 義務賦課規範と権能付与規範
指図方式の種類でも分類できる。これは、比較的古典的な分類である。
命令・禁止・許容・授権 という四つの指図方式
命令・禁止・許容の指図方式は、義務賦課規範という位置づけがされる。

授権規範の指図方式は、権能付与規範という位置づけが与えられる。
授権規範とは、有効な法的行為をおこなう私的、公的権能を一定の人または機関に与える規範のことである。
 
従来は、義務賦課規範中心に考えられてきたが、有名な法哲学者、H.L.A.ハート以降、権能付与規範が重視されている。

4 行為規範、裁判規範、組織規範
 行為規範、裁判規範(裁判規範は行為規範を前提)、組織規範の区別は、実定法レベルでも周知のこととなっている。現代において組織規範の意義が増していることは、憲法、行政法を勉強していれば、よく理解されているだろう。

5 法の妥当性(法の拘束力の根拠)
 法の拘束力の根拠を理論的にどこに求めるかについて、従来から論争がおこなわれてきた分野である。有力な見解が複数主張されている。

法律学的効力論 例 法実証主義的効力論
哲学的効力論 例 自然法論
歴史学的、社会学的効力論 例 実力説、承認説
 
法律学的効力論の論者であり、重要な論点を指摘したケルゼンとハートの立場をみてみる。
ケルゼン『純粋法学』
法段階説 上位規範から下位規範に妥当根拠が与えられる。根本規範を頂点にいわばピラミッド型の段階構造となっている。ただし、根本規範の妥当根拠を問うことができず、この点を弱点だと批判する見解もあれば、他方、この点は純粋法学の純粋法学たるゆえんであるとみることもできる。つまり、何故国民主権なのかということを、憲法の枠内で問う、つまり正当化することはできないということである。

ハート『法の概念』
個々人の行為に関する第一次ルール
承認、変更、裁定に関わる第二次ルール

承認の究極ルールが存在しており、この究極ルールの妥当性は問題にしない、
 ハートの分析は、法システムの分析にとって有益であったが、形式的であったため、自然法などから批判がある。