法規範の妥当根拠と構造
ある法がその社会に妥当しているというのはどういうことか。
一 妥当性
a 事実的妥当 行動・心理 実効性
b 規範的妥当(義務) 拘束力
a b の比重
二 妥当根拠
@哲学的効力論 価値根拠
A事実的(社会学的)効力論 力/実力
承認 承認の主体、承認の対象など。
B法律学的効力論
@哲学的効力論 代表的見解 自然法論
法律学の内部ではなく、法律学を越えるものに法の妥当性を求める見解である。
いわゆる自然主義であり、Aの社会学的効力論からも、法の自立性を唱えるBの法律学的効力論からも鋭く批判された。しかし、盲目的な遵法行為に歯止めをかけうるという意義は見過ごすことはできない。
A社会学的効力論
法は、社会の構成員の承認がなければ、あるいはその背後に実力者の存在など社会的権威が認められなければ、その社会に妥当する法とはいえないという立場である。近代以降にでてきた立場であるが、社会学的効力論のみでは、法の妥当性根拠としては不十分であろう。
B法律学的効力論
法の自立性を唱える立場から提唱される立場で、法体系の内部に法の妥当性根拠を求め、@もAも法体系の外部から法の妥当根拠を持ってくると批判する。ケルゼンの純粋法学と呼ばれる立場が代表的なものである。
弱点としては、法実証主義一般にあてはまる批判であるが、盲目的な遵法行為を導く危険性がある。ただし、法規範の分析にとっては見逃すことのできない業績を挙げている。
二 法規範の分類―法秩序の構造―
1 義務賦課規範と権能付与規範
義務賦課規範
指図方式の性質の違いで分類できる。
指図方式 命令・禁止・許容・免除 義務賦課規範
授権 権能付与規範
命令・禁止・許容・免除の指図方式は、いずれも義務賦課規範という位置づけがされる。
「してもよい」と規定してあっても、許容や免除とは異なる位置づけが与えられるべき規範群がある。 授権規範の独自性
授権規範の指図方式は、権能付与規範という別個の位置づけが与えられる。
授権規範の独自性
授権規範とは、有効な法的行為をおこなう私的、公的権能を一定の人または機関に与える規範のことである。 (例 後述の組織規範 法律行為を行う権能)
従来は、義務賦課規範中心に考えられてきたが、権能付与規範も着目されている。
関連問題
法における強制の位置づけ
法の機能の問題 秩序維持機能(+紛争解決機能)とは別個に、活動促進機能を考えていくべきではないか。
2 行為規範、裁決規範、組織規範
行為規範、裁決規範(裁判官向けだと裁判規範だが、行政機関の決定も射程に入れると裁決規範という表現となる)
名宛人は誰かによる区別である。
組織規範
組織の創設廃止、構成、手続きに関する規範
現代における組織規範の意義の増大
3 準則(rule)と原理(principle)
法規範の重要な分類の一つとして、 準則(rule)と原理(principle)とがある。
大陸法 英米法 共通
準則 (条件プログラム) 法律要件と法律効果を明確に分類して指図するタイプの規範
原理 (目的プラグラム) 抽象的指針により指図するタイプの規範 例 一般条項
条件プログラムと目的プラグラムという区別はルーマンによる区別。
関連問題 リーガル・フォーマリズム
原理の適用の際に裁判官は拘束されるか、何により拘束されるか問題。
英米の最も有名な法哲学者であるR. ドゥオーキンの議論がここでは重要である。詳細は、法的思考で扱うが、この問題に関連する彼の著作としては、『権利論』『法の帝国』などがある。
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